のび太の後期研修医日記

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『内科診断リファレンス』はEBMを目指す医師必携の1冊

投稿日:2018-01-29 更新日:

いつのまにやら国試まで1週間。久しぶりに医学書レビューを書こうと思います。

今回ご紹介するのは、

『ジェネラリストのための内科診断リファレンス: エビデンスに基づく究極の診断学をめざして』

という本です。

 

Contents

主要症候に対する鑑別、各々の所見の感度・特異度が分かる

例えば、『失神』という症候に対してどのような鑑別を挙げるでしょうか。

・心原性失神

・脳血管疾患

・起立性低血圧

・薬剤性

・神経調節性(血管迷走神経性失神・状況失神・頸動脈洞症候群など)

などが挙げられると思います。

本書では主要症候に対する鑑別が挙げられており、それぞれがどの程度の割合か挙げられています

例えば65歳未満の場合は心原性は12%であるのに対し、65歳以上の場合は34%にのぼることが、引用文献の出典とともに掲載されています。

また、心原性失神に対して、鑑別すべき器質的疾患(急性冠症候群)や不整脈についても丁寧に述べてあります。

また、疾患ごとに感度・特異度・陽性尤度比・陰性尤度比の高い所見が挙げられています。

例えば、神経調節性失神に特異度の高い症状についてもデータが挙げられており、65歳以上における腹部不快感は特異度・陽性尤度比の非常に高い症状だとわかります。

 

「『リンパ節腫脹』ってどんな鑑別が挙がるのだろう?疾患ごとの割合はどのくらいなのだろう?悪性疾患に特異的な所見は何なのだろう?」

「『浮腫』を診た時にどんな鑑別が挙がるのだろう?」

「『動悸』を診た際に、どのような鑑別が挙がるのだろう?貧血やAF, AFL, SVTなどの不整脈が鑑別に挙がるのだろうけど、それぞれどのくらいの割合なの?」

こんな疑問に数字で答えてくれるのが本書となります。

 

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疾患ごとにアプローチ法が分かる

『急性咽頭炎・扁桃炎』『慢性閉塞性肺疾患』『インフルエンザ』『くも膜下出血』など主要疾患別にアプローチの仕方、それぞれの疾患に特徴的な所見について、感度・特異度・陽性尤度比・陰性尤度比が述べられています。

例えば、『急性咽頭炎・扁桃炎』の項では

・急性咽頭炎の原因微生物は何か、各々の割合はどの程度か?

・溶連菌感染症に特徴的な所見の感度・特異度はどの程度か?例えば、前頸部リンパ節圧痛はどのくらいの感度・特異度がある?Centor score 3点以上であれば、溶連菌感染の感度・特異度はどの程度になる?

といったことが述べられています。

扱われている疾患が限られていますが、研修医が日常的に見かける疾患はほぼ網羅できています。ちょっとした調べ物をしたい時に非常に便利です。

 

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研修医1年目後半以降で有効活用できる本

正直この本は『安直本』には程遠い本です。日常診療で「あの所見っていつもとってるけど、どのくらいの意味があるんだろう?」と思った時に、辞書代わりに参照する本というのが正しいと思います。

内科専攻するのであれば通読を勧めますが、そうでないのであれば、辞書代わりに興味のある部分を読むのが正解だと思います。

日常診療でふと抱く疑問を数字でfeedbackして欲しいに読むと、大抵は答えが返ってきます。

 

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プロフィール

名前:のび太
とある国公立大学を卒業し、とある病院で働いている臨床研修医。2019年〜小児科後期研修医、2017-2019年初期研修医。研修医になって見て感じたことを記録に残したくてブログをはじめました。のび犬じゃないよ笑

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