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救急外来でどこまで検査したら訴えられないか?

Activedia / Pixabay

 

救急外来では、正しく診断・対処することを意識すると同時に、見落としがないか、そして万一訴えられることはないかと考えながら診療します。研修医が『訴訟』を最も意識する場が救急外来といえるでしょう。「あの患者さん帰したけど、ほんまに大丈夫だったかな?」と思うことは少なくないです。

 

「救急外来でどこまで検査したら訴えられないか?」という問いに答えるのは非常に難しいです。1次・2次・3次救急病院によっても違うだろうし、対応する医師の専門科によっても答えは異なるでしょう。世の中には、内科当直を整形外科や耳鼻科、放射線科の医師が行っている科が少なくありません。

 

例えば頭痛の患者さんでも、大半の患者さんは一次性頭痛(偏頭痛・群発頭痛・緊張性頭痛)や官房に伴う軽い頭痛なのだろうけど、中にはくも膜下出血や髄膜炎といった見逃すと致死的な(患者さんの命という意味でも、医者人生という意味でも)ものも含まれます。

ただ、見落としを減らすのも非常に難しいんですよね。

その理由の1つに、非特異的な症状がたくさんあって、その症状に気を取られてしまって見落としてしまう、というのがあると思います。

 

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こんな記事を読みました。

「研修医、非専門医の急性心筋梗塞見落としの責任は?」m3.com 2017年6月17日閲覧

https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/460507/

 

「自宅駐車場で突然、顔面蒼白になり、胸の苦しみを訴え嘔吐した」患者が受診。研修医・糖尿病内科医がfirst touchを行い、心電図・血液検査を行い異常ないため帰宅、との判断。再び受診したところ、診断は急性心筋梗塞だと循環器内科専門医に診断されPCI可能施設に転送、転送後治療されたものの死亡した、という事件です。

 

この場合、「胸の苦しみ」「嘔吐」というきわめて非特異的な症状が含まれており、研修医は診断に苦しみます。(僕も多分こんな患者さんが来られたら苦労すると思います)

 

「胸の苦しみ」「嘔吐」という症状がきわめて非特異的で、急性心筋梗塞のこともあれば消化管系の症状などであることもあるため、鑑別診断が非常に多岐にわたります。

 

先日、「救急当直をして思う」という記事で紹介した、「ジェネラリストのための内科外来マニュアル」を参照してもなかなかヒントは得られません。

この事件で研修医的に特筆すべきは、

女性を最初に診断したA医師は循環器の専門医ではなかったかもしれないが、そのことによって免責されるということもできない。「冠動脈の血流を完全に遮断することとT波の増高に引き続き、典型的な心電図が変化であるST上昇が発生する」や「1回の心電図では診断確定に至らないことがあるので、経時的に記録することが必要である」「クレアチンキナーゼの発生には、心筋梗塞の発症から時間がかかる」などということは、研修医向けのマニュアルにさえ記載されている基本的記事項である(『研修医当直御法度症例帖』)。

とあり、以前紹介した『研修医当直御法度』『研修医当直御法度 百例帖 第2版』(以前の記事:『研修医当直御法度は4月に読むにはちょっと難しい』)が裁判における資料として登場しています。つまり、世の中ではこの当直御法度程度の医療は求められている、ということ。必死に身に着けなければなりません。

 

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それでも、落ち着いてこの記事で紹介されている症例を検討しても、どのようにアプローチしたらよいか非常に悩みます。心電図・血液検査で問題なしと考えたなら帰してしまっても不思議はありません。ただ、とりあえず帰そうとする際に重症感がある人は、とりあえずベッド観察にしておくのが無難かな、と思います。どうしてもベッドは空けておきたい、と意識が働きがちで、1人の患者さんに長時間1つのベッドで寝ておいていただくのは難しいと思ってしまいますが、やっぱり重症感のある方に関しては、病院にオーバーナイトでもよいからいておいていただくのがよいのでは、と思います。

「後医は名医」とはいいますが、僕は後医であるにもかかわらず、この症例に対するベストアプローチにはなかなかたどり着けません。勉強を積み重ねなければと思います。

 

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