気がつけば8月。暑い日々が続き、救急外来をしていると、海でクラゲに刺されただとかハチに刺されたといった季節を感じさせる主訴の患者さんがたくさん訪れます。
熱中症の患者さんもたくさん見かけるようになりました。
熱中症なんて体冷やして輸液したら終わりやん!
という意見もあろうかと思いますが、きちんとガイドラインがあることですし、まとめておこうと思います。
以下のサイトの本文に貼られているリンクよりガイドラインのpdfを閲覧できます。
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Contents
「熱失神・熱痙攣・熱疲労・熱射病」は以前の表現
僕が講義で熱中症について教わった際には、「熱失神(heat syncope)」「熱痙攣(heat cramps)」「熱疲労(heat exhaustion)」「熱射病(heat stroke)」という分類が用いられていました。これらの臨床症状に基づく分類は、言葉と症状が結びつきやすく、直感的に理解しやすいため、現在でも用いられることが多いように思いますが、現在はこれらの分類を連続的に考え、
・I度熱中症:現場の応急処置・見守りで対処可。めまい・立ちくらみ・筋肉痛など。
・II度熱中症:医療機関への搬送が必要、嘔吐・頭痛・意識状態の変化など。
・III度熱中症:入院加療が必要。中枢神経症状・臓器障害・凝固障害など。
と分類するのが最新のガイドラインに沿っているようです。
おおむね、
・I度熱中症:「熱けいれん」「熱失神」
・II度熱中症:「熱疲労」
・III度熱中症:「熱射病」
に対応しているとのことです。
熱中症の予防・治療に推奨される経口補液
有名な話ですが、OS-1(オーエス・ワン)が大塚製薬から販売されており、このガイドラインでも推奨されています。スポーツドリンクについては塩分量が少なく、糖分が多いことに配慮が必要とされています。
また、かんたんな経口補水液の作り方として、
簡単な水分補給としては体重測定をおこな い、その減少分と同等の水分補給または 0.1 から 0.2%程度の食塩水、つまり 1L の水に 1 から 2g の 食塩と砂糖大さじ 2 – 4 杯(20 – 40g)の糖分を加え たものが効率よく水分を吸収でき有効な予防になる。 市販の飲料水であれば Na 量を 100mL あたり 40- 80mg 含んだものが適当である
と述べられています。
1Lの水に食塩1g-2g(小さじ1/5-2/5杯)、砂糖20-40g(大さじ2-4杯)を加えたもの
で経口補水したらOKのようです。OS-1はちょっと高いなぁ、と思う場合でもこれなら気軽に経口補水液を作れますね。
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カテ冷却や水冷式体表冷却はまだ十分に検討されていない
重症熱中症患者に関しては、初期冷却(氷囊、蒸散冷却)が推奨されています。これに加えて、カテーテルを用いて冷却水を流し深部体温を冷却する方法や、水冷式冷却マットで体幹および四肢を被覆することで冷却する水冷式体表冷却が用いられていますが、効果についてはまだ十分に検討されていないそうです。(逆に言えば、しないように推奨されているわけではない)
やっぱり基本的な対応は、首や鼠径の大血管に氷嚢を当てること、水を霧吹きでかけることで蒸散熱で冷却することになります。深部体温が38°C台になるまで積極的な冷却処置を行うことが推奨されています(1C)。一部には冷たい輸液を静注するのもよいのではないか、という意見がありますが、これについても深部体温に十分注意する必要があるようです。
重症熱中症は多臓器不全・DICに至る
熱中症というと、軽症のものを想像しがちですが、高齢者や疾患のある患者さんでは、多臓器不全・DICに陥り死に至る可能性のある重篤になりうる疾患です。この場合の治療法に確立したものはなく、基本的には対処療法となります。
平成 25 年(2013 年)の入院数は 35,571 人(全体 の 8.7%)、うち死亡者は 550 人(全体の 0.13%)で 65 歳以上が 474 人(死亡の 86%)を占めたそうです。
熱中症は時に致死的な疾患。油断せずに初期対応をしていきたいものです。
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View Comments (1)
初めまして。
最近、見つけて大変興味深く拝見しました。
私は最近、入院して病院の先生や看護婦さんに助けて頂きました。
その時の主治医の先生が研修医?の先生でした。
本当に良い先生に出会えて嬉しかったです。
のび太先生もお忙しいことと思いますが、患者さんのために頑張ってください!
病気で心細く、初めて入院していたため、やさしいお医者さんや看護師さんには感謝の気持ちしかありません。
思わずコメントしてしまいました。
それでは失礼致します。