のび太の後期研修医日記

人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる医師への道


研修医生活 日常生活

研修医はうつになりやすい?自殺する人もいる?

投稿日:2017-08-26 更新日:

yatheesh_ / Pixabay

最近こんなニュースが話題になりました。
「研修医自殺で労災認定 長時間労働原因、半年で休日5日」(朝日新聞より)

http://www.asahi.com/articles/ASK895RXFK89ULFA01W.html

 

研修医はその多忙さゆえにうつなどの精神疾患にかかりやすく、自殺するものも少なくない、と言われています。この産婦人科に勤務されていた先生も、半年の勤務で休日が5日しかなく、自殺したそうです。

そこまで研修医は忙しいのでしょうか?

 

Contents

初期研修医は忙しいが、精神的に追い込まれることは少ない

まずよく誤解されるのですが、今回不幸にもなくられた先生は、後期研修医です。つまり、医師国家試験に合格して2年初期研修医をして、その後自分が進む専門科にて後期研修医として研鑽している医師です。

初期研修の間は、各診療科を1-2ヶ月ごとに回るため、まだまだ「お客さん」感覚。将来進む科目ではない科を回ることが多いですので、研修医も指導医もそこまで「本気」ではないです。そのため、病棟の雑務で多忙ではあっても、「何が何でもこの患者さんの病気のことを知り尽くさないといけない」という意気込みはあまりなく、いざとなったら上級医が足りない点はやってくださるので、精神的に追い込まれることは少ないです。

例えば、消化器内科に将来進もうと思っている研修医は、内科系の科目(呼吸器内科や循環器内科など)を回っている間はちょっと頑張って勉強するかもしれませんが、産婦人科や外科を回っている間は「まぁそこそこに」となるわけです。

もちろん、初期研修医であっても、田舎の病院で研修するとなると、「戦力」になることを求められるので、大変だとは思います。(その分給料は高いです)

この話は、以前の記事でちらっと話題にしました。

研修医のお財布事情 お給料はいくら?年収はどれくらい??

 

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後期研修医になると一気にハードになる

こんなわけで、初期研修医はそこまでしんどくないことが多いですが、後期研修になると状況は一変します。後期研修医になると医療に対する責任がぐっと増え、他の科の先生からしたら後期研修医であってもその科の専門家なので、コンサルテーションを随時受けることになります。

例えば、脳外科のベテラン部長の先生の患者Aさんの肝逸脱酵素(ASTやALT)の値が上昇してきたとなると、消化器内科にコンサルテーションを行うことになるわけですが、そのコンサルテーションを受けるのが医者になって3年目の消化器内科後期研修医であることは決して珍しくはないことです。

一般に後期研修医になると給料面でもぐっと良くなる病院が多いですが、それに見合わないほど仕事の責任・労働時間が大きくなるのです。

 

メディアの報道は矛盾に満ち溢れている

研修医が自殺すると新聞やテレビ等のメディアは大きく取り上げ、「研修医の労働環境の改善が求められる」などと騒ぎますが、同じメディアが別の時には「救急車のたらい回しはけしからん。医者はもっと働け。」とまくし立てます。こんな報道を見るたびに、矛盾してるよなぁ、と思います。この件に限らず、メディアは正しく客観的に情報を報じないことがままあります。

 

奈良のいわゆる「妊婦たらい回し事件」が有名ですが、救急隊が搬送を申し込んだ病院は「受け入れ拒否」したのではなく「受け入れ不可能」であったはず。脳疾患が生じた疑いのある妊婦に対し、十分な医療を施せる病院はそんなに多くありません。責任を持って治療を行えない可能性が高いため、受け入れができなかったわけで、それでもメディアは「受け入れ拒否」と表現し、読者を煽ります。

そんなメディアの力で世論の大部分が形成されていくのが、ちょっともどかしいなぁ、と時々思います。

 

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執筆者:


  1. 美咲 より:

    研修医の過労死、なくなりますように!
    過労死、自殺、なんでなくならないんだろう?
    真面目に働いている人が、過労死する、
    絶対、おかしいと思います。

  2. Kaza より:

    初めまして!卒後四年目の臨床獣医です。アメリカの獣医学の雑誌でも、臨床現場の獣医師はうつになる確率がそのほかの仕事より1.5倍近く高いというデータがあり、日本でも同じような印象を受けています(日本ではそこまでメンタルヘルスに力をいれていないのでデータなしですが)。長時間の勤務に加え、命に対する責任が重いという精神的な負担が拍車をかけているのかと思います…。もちろん動物とは比べものにならないものだと思いますが。業界は異なりますが若手同士、がんばりましょう。

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プロフィール

名前:のび太
とある国公立大学を卒業し、とある病院で働いている臨床研修医。2019年〜小児科後期研修医、2017-2019年初期研修医。研修医になって見て感じたことを記録に残したくてブログをはじめました。のび犬じゃないよ笑

※当ブログに掲載している情報、特に医学的情報は医学を勉強途中の研修医の意見に過ぎません。その点を留意の上お読みくださいませ。

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