今話題の月9ドラマ『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』の感想を書いていきたいと思います。
今回は第9話。バックナンバーはこちらよりご覧ください。
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Contents
臓器移植の功罪
橘Dr.の息子さんの優輔くんは拡張型心筋症(DCM)を患っており、根本的な治療法は心移植しかありません。今回のエピソードでは、脳死状態に陥りかつご家族が臓器移植を承諾している患者さんが現れ、優輔くんに移植する心臓が確保できそう、という場面があります。
もちろん両親は大喜びするわけですが、優輔くん本人は移植を拒みます。
理由は「お父さんが大好きだから」
優輔くん本人がDCMだとわかったときから父親は、「新聞などで子どもが事故に遭うニュースに関心を向けるようになり、人が変わってしまった。お父さんが、他の子どもをが死ぬのを待つようになった、、、」と。
臓器移植は極めて原始的な医療です。
もちろん、移植そのものの手技は非常に高度ですし、臓器の保存・搬送に関しても種々の高度な技術が要求されます。ただ根本の考え方からすると、移植医療は、機能不全に陥った臓器を、他人の幾分は健康な臓器とつなぎ替える、という極めてシンプルな医療です。その分倫理的な問題は山積しています。
臓器移植しか治療法がないとわかった時、患者やその家族は移植臓器が確保できること、を望みます。ひいては、他人の脳死を望むことになってしまいます。
自分が生きる、家族が生きる、、、そのために他人の死を祈るのは許されることなのでしょうか?
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患者が
「移植臓器が確保できるといいなぁ」
と言うのは罪なことなのか?
患者の周りの人が患者・患者の家族に
「移植臓器が確保できるといいね」
と言うのはドナーの脳死を祈ることなのか?
移植臓器が確保できた患者・患者の家族に
「見つかってよかったですね」
と言うのは、ドナーの死を喜ぶことになるのか?
人間は自分本意な生き物です。人類の歴史を振り返ると、太古の昔は自分の領土・食料を拡大するために隣接する集落を襲撃し奪っていましたし、自分の価値観と相反するそれを持つ人間を駆逐する、、、などなど、なかなかにエゴなことをしてきました。
そして現在の価値観ではこのような考え方は間違っているとされています。
生存権を含む人権は、「公共の福祉に反しない限り」最大限保証されます。つまり、自分が生きるために他人を殺すことは決して許されないけど、偶発的に死んでしまったら、その死を自分の生のために活かすのは許される。
「自分が生きる、家族が生きる、、、そのために他人の死を祈るのは許されることなのでしょうか?」
という問いに対する答えは、
「人を殺めるようなことをしない限りは、心に思うだけなら許される。だけど倫理的なことを考えると口にするのは憚られる」
というのが冷たいけど実際の答えでしょう。
例えるならば、
「あいつムカつくし、ぶん殴ってやりたいなー」
と思ったとしても、手を出したら罪になるけど、思うだけなら自由、口に出すとトラブルの原因になるというのと同じことだと思います。もちろん、レベルがぜんぜん違う話ではありますが。。。
それでも、良くも悪くも世間にすれていない優輔くんは強く罪悪感を感じるわけですが。。。
ぐだぐだとアタリマエのことを書いてしまいましたが、難しい問題やなぁと思います。
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医局長に昇進する緋山Dr.
病院では女医の数がどんどん増えています。もちろん東京女子医科大学出身の先生は全員女子ですし、多くの大学では男女比は、男:女=1〜2:1くらいです。
僕の研修医の同期にも女医さんはたくさんいますし、上司にも女性の方はたくさんおられます。仕事もバリバリするけど育児・夫の世話もきちんとしていて、舌を巻くこともしばしば。女医さんのキャパは半端ないです。
一昔前では、出産・育児で休職すると、昇進に影響することもあったようですが、僕が勤めている病院ではそんなことはなく、出産・育児で休職中もきちんと医師経験年数に加算され、給料に反映されます。医局長とか部長とかの肩書がつくかどうかは、経験年数よりも、その本人の資質によるものが大きいと思います。
緋山Dr.もその技量、後輩の指導力があったからこそ医局長になることができたのでしょう。大学病院の医局長は、外来担当の割り振りや医局員のバイトの斡旋、労務管理などなど、多岐にわたるきめ細やかな気配りを要求されます。ボスの信頼があってこそ任命されたのだと思います。
iPadって現場で使われているのでしょうか?
このドラマではしばしばiPadで患者の頭部や腹部のCTの画像を見ていますが、iPadのRetinaモデルですらそんなに解像度よくないです。
大半の病院ではPACS viewerとしてEIZO社のディスプレイを使っていることが多いと思います。この解像度はなかなかポータブルのiPadでは出せない(特にマンモグラフィー)。
iPadってなんとなくハイテクそうだからドラマに採用したのだと思いますが、よくよく考えると、PHSにiPhoneを使っていることからも分かる通り、docomoがスポンサーだからなんやな、、、と思います。
あってるのかな??
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「私の好きなチームはこの1時間でばらばらになってしまった」
がっきーが上記発言をします。こんなにいろいろなことが1時間の間に同時に起こることは、めったにないやろ、、、と心のなかでツッコミをした人は僕だけではないはずー(*ノω・*)
今回のエピソードの終盤では、地下鉄の地盤沈下で負傷者が多数出て、ドクターヘリ要請となります。
白石Dr.が周りを見渡すと、「医師」のゼッケンを付けた人が多数いる。そのときに白石Dr.がとった行動は「救急隊長を探し、現状確認をする」。
素晴らしいなあ、と思います。
僕は地元密着型の病院に勤めているので、地元開催のマラソンの救護所にしばしば駆り出されます。そんなときに大事だとつねづね実感するのは、リーダー役の医師が負傷者の全体像を把握すること。そして、リーダー役の医師は患者を診察しないこと。
マラソンにしろ、災害現場にしろ、一度に多数の負傷者が現れる現場では、現場が大きく混乱します。この混乱を収めるには、重症患者を現場から搬送し、病院に連れて行くしかありません。逆に言えば、患者を現場から搬送さえしてしまえば、現場の混乱は落ち着きます。その搬送の指示には、負傷者全員の重症度を把握する医師の存在が不可欠です。医師は患者を一度に1人しか診察できません。診察中は他の患者に関心を向けることはできないのです。だからリーダー役の医師は患者を診察しない方がbetterなのだと思います。(異論はあると思います)
現場でできる処置なんて、たかが限られているので、バイタルさえ安定したらすぐに搬送する。滅多なことがない限り、穿頭や開胸することはないと思います。(こんなこと書くとドラマ関係者、監修の先生に怒られそう。。。)
最後に、山Pが瓦礫の下に埋もれてしまいます。
まさか、藍沢Dr.は最終回でトロントに行けずして絶命してしまうのでしょうか、、、?
多分そんなことはないので、どのように救出されるのか、楽しみにしておきます(*^^*)
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