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インフルエンザ診療をしていて思うこと。迅速検査に意味はある?

インフルエンザが流行っています。こんな時期に救急外来をしていると、「インフルエンザかもしれないので検査してください」と言ってやってくる患者さんがたくさんいます。

 

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インフルエンザ迅速検査は原則実施しない病院があります

インフルエンザ流行期にインフルエンザ迅速検査にはあまり意味がないと言われています。

実際に東京都立小児医療センターでは、インフルエンザ迅速検査は原則実施しない方針としています。

http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t303/201712/553983.html?n_cid=nbpnmo_mled

 

東京都立小児医療センターというと、成育医療センターに次ぐ小児医療のメッカです。このような大病院でインフルエンザ迅速検査を実施しないのはなぜなのでしょうか?

もちろん、インフルエンザ様の症状がある患児全員に迅速検査を実施していては、救急外来がパンクしてしまうというのも理由の1つかと思います。

ただ、それ以上に、インフルエンザ流行期においてインフルエンザ迅速検査は意義が乏しいと言われています。

 

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なぜインフルエンザ流行期において迅速検査の意義が乏しいのか?

その理由に関しては、↓で示したスライドを参照すればよくわかると思います。研修医にとってはEBM(Evidence Based Medicine)について学べる良いスライドだと思います。このような良い教材を提供してくださっている名郷先生に敬意をを表したいと思います。

 

簡単にまとめると、

  • インフルエンザ迅速検査は感度70%程度、特異度98%程度の検査である(これに関しては検査キットによって差異があるかもしれません
  • つまり、インフルエンザ迅速検査は、「陽性であればほぼ確実にインフルエンザである」「陰性であってもインフルエンザでないとは言えない」検査である。
  • インフルエンザ流行期においては、発熱・咳嗽・鼻汁・関節痛などの症状が揃えば、インフルエンザである事前確率が非常に高い
  • そのため、インフルエンザ迅速検査陰性であってもインフルエンザである可能性が高い
  • 従って、インフルエンザ迅速検査よりも、医師が症状から臨床診断する方が検査よりも的確な判断ができる。
  • ちなみに、そもそも抗インフルエンザ薬(タミフル等)は有熱期間を1-2日短縮する程度の効果しかないため、健常人においては必ずしも服用の必要はない。高齢者の患者さんや免疫不全の患者さん、施設入居中の患者さんの場合は話は別です

ということです。流行期でない場合はまた違った話になります。

 

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安易な迅速検査が医療費を圧迫する

インフルエンザ迅速検査を実施すると下記の費用がかかります。

D012感染症免疫学的検査 「インフルエンザウイルス抗原定性」 147点

D026検体検査判断料 「免疫学的検査判断料」 144点
D419その他の検体採取 「鼻腔・咽頭拭い液採取」 5点
『BD Flu エグザマン™』の製品説明ページより

インフルエンザ迅速検査は決して安い検査ではありません。

保険点数で300点程度。およそ3000円ほどかかる検査です。先述のように流行期においては意義が乏しい検査であるのならば、インフルエンザ迅速検査は日本の医療費を圧迫する検査と言っても過言ではないのかもしれません。

 

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ここまで分かっていても「ことなかれ主義」で検査してしまいます

ただ、ここまで迅速検査の意義を分かっていても、

  • 患者から迅速検査を求められ、検査の意義を説明しても「検査してくれ」と言われれば検査してしまう。心のなかで「意味もなく痛い思いをするだけなのになぁ」と思いつつ。
  • 看護師から入院した際に「病棟管理が変わるので検査してくれ」と言われる。心のなかで「インフルエンザとはいえ、飛沫感染だから感染予防策は普通の感冒の人と何ら変わりないのになぁ」と思いつつ。
  • 医療事務から「タミフルを出すためには検査をしてください」と言われる。心のなかで「別に迅速検査陽性でなくても、臨床的にインフルエンザと診断し、病名にインフルエンザと入れておけば査定されることはないのになぁ」と思いつつ。

てな感じで「ことなかれ主義」に走ってしまう自分がいます。情けない限りですが、例えば都立小児医療センターのように施設として検査しない方針にするとか、保険審査で迅速検査は原則査定対象とするなどなど、個々人の努力の及ばない「大きな力」で規制しないと、なかなか難しいなぁと思います。

医師・看護師を含めた医療関係者・患者にしっかりと検査の意義を教育することも、大変なことではありますが必須なのだと思います。

 

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