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厚生労働省作成の「かぜ診療ガイドライン」

以前抗菌薬の適正使用の難しさについて記事を書きました。

経口第3代セフェム系の抗菌薬の処方は減ってきたなぁ、と思う一方で、「風邪に抗菌薬」はなかなかなくならない印象。この手の抗菌薬処方は、年配の先生に多い印象ですが、彼らは彼らで「抗菌薬を投与していなくて重症な細菌感染症になってしまった」痛い経験があるから処方しているわけで、一概には責められないと思います。僕らのような若い研修医に「君らが抗菌薬フリーで患者さんを帰せちゃうのは、まだ怖いもの知らずやからだと思うで」とも言われます。そう言われるとちょっと怖くなっちゃう。。。

 

研修医の抗菌薬勉強に参照すべき本は以前記しました。ご参考までに。

 

今回は厚生労働省が「かぜ診療のガイドライン」を発表したようなのでご紹介してみたいと思います。

 

Contents

厚生労働省謹製「抗微生物薬適正使用の手引き」

厚生労働省ホームページより(2018年6月1日閲覧)URLを貼っておきたいと思います。

抗微生物薬適正使用の手引き 第1版
抗微生物薬適正使用の手引き 第1版 ダイジェスト版

 

お忙しい方はダイジェスト版を見ると簡便かと思います。

風邪症状を「鼻の症状」「喉の症状」「気道の症状」の3症状に分割し、それぞれが同程度あるのを「感冒(いわゆる風邪)」と定義しています。

研修医の中でも持っている人の多い『ジェネラリストのための内科外来マニュアル 第2版』でも採用されている考え方です。

「喉の症状」メインの「急性咽頭炎」で使用すべき抗菌薬は、「溶連菌感染に対するアモキシシリンのみ」というのがクリアカットで非常にわかりやすいなぁと思いました。1年目の先生が「白苔がついていたのでアモキシシリン処方しました」ということがままありますが、実はEBV infectionでアモキシシリン内服で皮疹出しちゃった!というオチがままあるので気をつけましょう。皮疹が出るだけなので大したことはありませんが。。。

 

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「抗菌薬を処方しない説明例」も掲載されている

患者さんの中には「抗菌薬」を出してほしいと求める方もたくさんおられます。

そんな患者さんへの説明例も掲載されています。

 

【医師から患者への説明例:感冒の場合】
あなたの「風邪」は、診察した結果、ウイルスによる「感冒」だと思います。つまり、今のところ、抗生物質(抗菌薬)が効かない「感冒」のタイプのようです。症状を和らげるような薬をお出ししておきます。こういう場合はゆっくり休むのが一番の薬です。普通、最初の2~3日が症状のピークで、あとは1週間から10日間かけてだんだんと良くなっていくと思います。ただし、色々な病気の最初の症状が一見「風邪」のように見えることがあります。また、数百人に1人くらいの割合で「風邪」の後に肺炎や副鼻腔炎など、バイ菌による感染が後から出てくることが知られています。3日以上たっても症状が良くなってこない、あるいはだんだん悪くなってくるような場合や、食事や水分がとれなくなった場合は、血液検査をしたりレントゲンを撮ったりする必要がでてきますので、もう一度受診するようにしてください。

これ以外にも「ウイルス性咽頭炎」「急性気管支炎」などのパターンも掲載されています。参考にしてみてはいかがでしょうか。

 

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急性下痢症についても掲載されている

急性下痢症に関してもこのガイドラインでは扱われています。

要するに基本的には「抗菌薬不要」ということです。ただ、「高齢者などには抗菌薬投与も考慮すること」となっており、最も層の厚い年齢がカバーされていないのが少し気になります。なかなか難しいです。。。

 

よくよく考えると厚生労働省が発行しているガイドライン、って珍しいのではないでしょうか。それだけ国が抗菌薬適正使用に腰を据えて取り組んでいる、ということなのでしょう。僕が勤務している病院でも、時々MDRP(多剤耐性緑膿菌)やVRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が検出されるようになってきてしまっているのが現状です。限りある抗菌薬を適切に使用できるようになりたいものです。

 

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