最近ドラマの感想を更新するブログになってしまっていたので、たまには医療関係の感想でも書いていきたいと思います。
世の中には星の数ほど病気があります。その中には、トラブルに発展しやすい病気がいくつかあります。どんなに優れた医者であっても、患者さんがかかってしまった病気によってはトラブルがおきてしまいやすいのです。
例えば急性心筋梗塞で不幸にも患者さんが亡くなって場合、残された家族は悲しいですが「心筋梗塞で亡くなってしまったのだから仕方ない」と了解することができるものです。そのため、医療者とのトラブルに発展することは少ないと思います。
その一方、例えば『風邪』で患者さんが亡くなってしまった場合、残された家族はその死に納得することができるのでしょうか?このように『致死性の風邪』に患者さんがかかってしまった場合、医療者とのトラブルへと発展しやすいのです。
悪いのは病気。きっと、医療者も患者も悪くないのですが、患者も医者も不幸になる疾患が存在するのです。例を2つ挙げます。
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心筋炎
原因はコクサッキーB、エコー、ムンプス、インフルエンザといったウイルスです。つまり風邪の原因となるウイルスと大差ありません。
咳や鼻水といった上気道感染症状や腹痛・下痢といった消化器症状を初発症状とし、数日〜数日後に心症状が出現します。
初期症状が普通の風邪と同じですが、数日後には胸痛に悩まされたり、心不全になったりして、稀ではありますが死に至ります。
日本心臓財団のHPでは以下のように説明されています。
急性心筋炎では心筋にウイルスなどが感染して発症します。代表的な例を幾つか紹介しましょう。まずかぜ症状が3~5日先行します。その後に、不整脈や急性心筋梗塞様胸痛、それに心不全やショックなどの重い症状へと続きます。もちろん、かぜ症状だけに留まり、心症状や全身症状に至らない患者さんも多くいます。また先行する症状がはっきりせずにいきなり心不全やショックで発症する患者さんもいます。今なお早期診断が難しいためにベテラン医師を悩ませる病気です。したがって、適切な初期対応が遅れてしまうことがあり、社会問題化しています。そのような背景に加えて、心筋炎の中で死に至るほど急激に病状が変化する心筋炎があります。「劇症型心筋炎」と呼ばれています。30年前までは救命もできませんでした。今も救命率は約50%に留まっています。
日本心臓財団『心筋炎・心臓炎とは』より
この病気の診断は困難な上に、転機が良くない場合があるため、医療者泣かせな病気です。もちろん患者さんも、なかなか診断がつかないため大変です。
急性喉頭蓋炎
研修医の間では、five killer sore throatとして有名な疾患がいくつかあります。その名の通り、喉が痛くなる致死性の疾患です。
有名な当直御法度にも掲載されていますね。
寺沢 秀一,島田 耕文,林 寛之 三輪書店 2016-07-09
ズバリ、
- 急性喉頭蓋炎
- 扁桃周囲膿瘍
- 咽頭後壁膿瘍
- 下顎窩膿瘍(Ludwig’s angina)
- Lemierre’s syndrome(内頸静脈の血栓性静脈炎、全身最近生息選、Fusobacterium)
の5つです。
この中でも特に有名なのは急性喉頭蓋炎。
five killer throatの何が怖いかというと、気道閉塞をきたし死に至る場合があること。
Stridorが聞こえていて、唾液を飲み込むことすらままならなくて、前頸部正中が痛い。そして声が曇っている(muffed voice)。
こんな人を見たら、即座に耳鼻科call。頸部CTや頸部Xpを撮影しthumb signやvallecula signを確認、喉頭ファイバーを耳鼻科の先生にしていただきます。
挿管できれば勝ち、できなければ負けな疾患です。スピード感が問われる疾患ですが、初期症状が風邪に似ているので難しいです。
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初期症状が軽症であり発見が遅れがちだけれども、重症化する可能性がある病気を患者も医者も不幸になる疾患として2つ紹介しました。
救急外来を受診すると、帰宅の際に必ず「風邪だと思いますが、症状が長く続く場合や悪くなる場合は必ず再診してください」と説明されると思いますが、その理由はこのような疾患があるからです。「ただの風邪だと言ってる割にはこの医者は、責任逃れみたいな説明するなぁ」と思われることがあるかとは思いますが、このような事情があるので、ご高配いただけるとありがたいです。
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