のび太の後期研修医日記

人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる医師への道


医学関連

テタニーと補正Ca

投稿日:

Myriams-Fotos / Pixabay

救急外来でよく見かける疾患として、「過呼吸症候群」が挙げられます。

僕が持っているイメージは、「過呼吸になって、CO2が飛んでいって、呼吸性アルカローシスになって、Caが下がることで筋肉の興奮性が上がって、テタニー(手足のしびれ)がおきる」という程度でした。「呼吸性アルカローシスになって、Caが下がる」ってのがテキトーですよね笑

また、カルシウムに関するややこしい概念の1つに、「補正Ca」があって、

補正Ca = 実測Ca + 4 – Alb(アルブミン) …(1)

という式が成り立つのが有名です。

正直なところなぜ”補正”なんてことをしないといけないかよく分かっていなかったのですが、この度勉強していると「過換気症候群」の機序と併せて理解が深まってきました。

 

そもそも、筋肉の興奮性を上下させる等の「生理的活性」を持つのは、イオン化Ca(Ca2+)です。そして、イオン化Ca(Ca2+)はアルブミンと結合している状態(「Alb結合Ca」とここでは呼ぶ)だと「生理的活性」を持ちません

 

そして、実測Caは

実測Ca = イオン化Ca(Ca2+) + Alb結合Ca …(2)

の総和です。繰り返しますがそのうち「生理的活性」を持つのは、イオン化Ca(Ca2+)のみ。

 

スポンサーリンク

 

過換気症候群になり、呼吸性アルカローシスになると、もともと負に帯電しているAlbは電気的平衡の影響でさらに負の電荷を帯びます。

ごくごく大雑把なイメージは、

Alb + H+ ⇔ Alb

両辺にOHを足して、

Alb + H2O ⇔ Alb + OH

となります。呼吸性アルカローシスになると、OHが増えるので、平衡は左に傾きます。

その結果、負の電荷を持つAlbの量が増え、これが正の電荷を持つイオン化Ca(Ca2+)と結合することで、Alb結合Caとなり、イオン化Ca(Ca2+)が減少し、その結果、テタニーが起きる、という理屈です。

 

また、補正CaはAlbの値が小さい(4mg/dL以下)の時に、Albと結合するイオン化Ca(Ca2+)が減少するため、相対的にイオン化Ca(Ca2+)が増加、つまり活性を持つCaが増加するため、実測Caを用いることでCaの影響を過小評価してしまわないように用いる値です。

 

だいぶ胡散臭い理解ですが、頭の中がちょっとスッキリした気がします。(2)の式を(1)の式に代入すると、、、??となるので深くは考えないようにしましょう笑

 

関連する2つの事柄がちょっとしたことでつながると記憶が強化されて気持ちいいなぁ、と思います。

 

ランキングに参加しています。よろしければクリックいただけると幸いです!
にほんブログ村 病気ブログ 医者・医師へ
にほんブログ村

研修医ランキング

 



 

336*280

336*280

-医学関連

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

コウノドリ -2nd season- 第5話 研修医目線の感想

今話題の医療ドラマ『コウノドリ』。ちまちまと出来る限り感想をアップしていきたいと思います。 今回は第5話です。バックナンバーはこちらからどうぞ。 1stシーズンはAmazonプライムビデオで配信中。無 …

麻疹の皮疹画像が公開されています

全国的に麻疹の流行が報道されています。 麻疹(はしか)はその名の通り麻疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。空気感染するため、感染拡大しやすく、公衆衛生的にも重要な疾患です。   国立 …

望まない患者さんに心臓マッサージが行われている現実

研修医として救急外来で働いていると心肺停止の患者さんが救急搬送されてくることも珍しくありません。そんな中、違和感のあることが度々あります。   スポンサーリンク   Content …

穏やかな最期を迎え難い現状

初期研修2年も終わりかけとなった今日このごろ。いわゆるBLS, ACLSといった蘇生処置の初期対応について初期研修の当初はトレーニングをたくさん積みましたし、この2年間で幾度となく対応してきました。 …

小林麻央さんの訃報を受けて乳がんについて勉強する

By: K B 小林麻央さんが2017年6月22日に34歳の若さで夭逝されました。これを受け国民の間で乳がんに対する関心がかつてないほどに高まっているのを感じます。僕も研修医として乳がんについて勉強し …

doctor_dog

doctor_dog

プロフィール

名前:のび太
とある国公立大学を卒業し、とある病院で働いている臨床研修医。2019年〜小児科後期研修医、2017-2019年初期研修医。研修医になって見て感じたことを記録に残したくてブログをはじめました。のび犬じゃないよ笑

※当ブログに掲載している情報、特に医学的情報は医学を勉強途中の研修医の意見に過ぎません。その点を留意の上お読みくださいませ。

twitterのフォローはこちらから!