プレジデントにこんな記事が載っていました。
介護10年「頼むから、今日死んでくれ」(2018/2/4閲覧)
http://president.jp/articles/-/24333
研修医として働いていると、現在の日本では介護疲れが増えている、老老介護が増えてきていると実感します。高齢化の進むちょっと田舎の病院に勤務していることもあり、僕自身の親は介護を要する年齢ではまだありませんが、この記事の内容には身がつまされる想いがします。
人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる医師への道
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プレジデントにこんな記事が載っていました。
介護10年「頼むから、今日死んでくれ」(2018/2/4閲覧)
http://president.jp/articles/-/24333
研修医として働いていると、現在の日本では介護疲れが増えている、老老介護が増えてきていると実感します。高齢化の進むちょっと田舎の病院に勤務していることもあり、僕自身の親は介護を要する年齢ではまだありませんが、この記事の内容には身がつまされる想いがします。
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Contents
研修医のルーチン業務の1つに、入院・退院処理があります。そんな業務の際に、日本の介護の現状を実感します。
例えば、誤嚥性肺炎で入院した患者さん(男性)がいたとします。
普段は妻と2人ぐらし。ADLは、食事は妻が用意したものを食べる、歩行は家の中でつたい歩き程度。排泄・入浴はなんとか自分でできる程度。
このような方がある日、誤嚥性肺炎で入院したとします。
スルバシリン(ABPC/SBT)で加療し、STさん(言語聴覚士)にも介入してもらって、2週間くらいかけて、なんとか退院できるくらいの状態になりました。
そして、担当医である研修医は妻に退院の話をすることとなります。
担当医「〇〇さんの病院での治療はこれで終わりです。退院の日はいつにしましょうか?」
妻「こんな状態だと、私一人では面倒を見ることはできません。もう少し病院においておいてもらえませんか」
担当医「しかし、病院でおこなう治療はもうありません。ごはんも少しずつなら食べれていますし、点滴や抗菌薬の点滴ももう必要ありません。」
妻「でも、看護師さんが食事介助をして、なんとか食べれる、という程度ですよね。前は私が用意していたら、こぼしながらも自分ひとりでご飯を食べていましたよ。熱ももうないし、病院で必要な治療がないのは分かりますが・・・」
担当医「この病院は急性期病院といって、命に関わる病気がある人に対して入院加療をすることを社会的に要請されている病院です。自宅に帰れないのであれば、いわゆるリハビリ病院に転院していただくことになります」
日本全国でこんな話が繰り広げられていることと思います。
高齢者は経時的にADLが低下していきます。特に入院加療はADLが低下する大きな要因の1つです。
肺炎にしろ心不全にしろ、一次的に悪化した状態は病院で回復するのですが、ADLは入院前の健康な状態よりは必ず低くなります。
つまり、入院前より退院後のほうが要介護度が増すことが多いです。
このような患者さんに関しては、研修医が勤務するような急性期病院では入院継続することができず、療養型病床を持つ病院に転院をお願いすることとなります。自宅退院しても、介護力が低いことが多く、転院となってしまうことがしばしばあるのです。
そして、転院調整にも難渋することが多いなぁ、と最近思います。転院調整の電話を相手の病院にかけるのも研修医の仕事の1つではありますが、満床で断られることも多いです。
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老々介護も増えている印象です。
例えば「70歳の妻が、80歳の高齢の夫の介護をしている」というケースがあります。
夫は食事・入浴・排泄に介助が必要で、ヘルパーにもきてもらっているが、妻の助けが生活のためには必要。
こんな環境で、夫がインフルエンザにかかってしまいました。病院を受診し、オセルタミビルを処方され帰宅となりました。そうこうしているうちに、妻もインフルエンザにかかってしまいました。
こんな中、妻は救急外来を受診します。家に夫を1人残すことは出来ないため、夫とともに受診することになります。
病状的には、オセルタミビル内服で自宅療養が可能な範囲内。そんな中、以下のような会話が展開します、
担当医「幸いご自宅で療養が可能な範囲内です。おそらくは旦那様からインフルエンザをもらってしまったのだと思います。お薬を処方するのでお大事になさってください。」
妻「しかし、この私の体調ではとてもとても夫の介護はできません。子どもたちも独立して都会に出てしまったので、当てにできません。夫と一緒に入院させてもらえませんか。」
担当医「しかし、入院による加療を要するほどの症状ではないですし、なんとか自宅で見れないでしょうか」
妻「そんなことは出来ません。この病院は病人を入院させることもできないんですか」
こんな会話を僕はこの冬で数回したことがあります。インフルエンザだけで入院することはできないので、結局はなんとか息子さんや娘さんを電話で説得して、田舎に帰ってきてもらい両親の面倒をみてもらうことにしました。
入院できる理由を頑張って探す(「インフルエンザ肺炎になっていないか」「糖尿病など免疫不全に至る要因がないか」)のですが、こういう場合に限ってなかなか理由は見当たりません。妻ならまだしも、夫は既に回復傾向、熱も咳もありません。さすがにこんな方に入院していただくわけにはいけません。
老々介護は非常に介護力の低い危うい体制です。核家族化が進み、高齢者の介護を誰が行うのか、社会的な問題となってきていると思います。
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このプレジデントの記事のように、介護は娘や妻など1人の仕事となってしまいがちです。介護期間が数年ならまだしも、十数年という単位となると、思わず殺めてしまいたいと思ってしまうのもムリのないことかもしれません。
病院は医療の場であり、介護のための施設ではありません。ただ、両者が曖昧になっていることも多いかと思います。
本来は医療保険で「レスパイト入院」はごく限られた場合にしかできないはずですが、目をつぶって介護者の負担を軽減するために入院を許可してしまっている場合が少なくないように思います。リハビリ病院が事実上の介護施設となってしまっている場合もあります。
医療と介護が制度上は別個のものにはなっていても、実態は曖昧に混じり合っているのが日本の現状かな、と思います。
プレジデントの記事を読んで、日頃仕事をしていて思うことをつらつらと書いてみました。難しいよなぁ、、、と日々思います。
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執筆者:のび太
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