のび太の後期研修医日記

人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる医師への道


研修医生活

新専門医制度に対する研修医の想い

投稿日:2017-10-23 更新日:

新専門医制度に基づく専攻医の募集が始まっています。医療界を騒がせた新専門医制度に関して、研修医目線の感想を書いてみたいと思います。あくまで私見ですので、ご了解ください。

 

本来は昨年に開始するはずだった新専門医制度。紆余曲折を経て、今年から新専門医制度に基づく専攻医募集が始まっています。

 

日経メディカルの記事によると、募集スケジュール案は下記のとおりになっているようです。

募集スケジュール案
■一次登録
・2017年10月10日~11月15日 登録期間
専攻医希望者は基幹施設のプログラム統括責任者と連絡を取り、十分に情報を共有した上で登録
・11月16日~11月30日 登録確認期間
必要に応じて採用試験。各領域で都市部への希望者の集中の有無の確認や調整を行う
・12月1日~12月14日 採用期間
プログラム統括責任者が、当該領域学会および機構と協議し採否を決定
・12月15日 専攻医希望者への採否の通知

■二次登録(一次登録で研修先が決まらなかった専攻医希望者)
・2017年12月16日~2018年1月15日 登録期間
専攻医希望者は基幹施設のプログラム統括責任者と連絡を取り、十分に情報を共有した上で登録。都市部への集中が明らかな場合、その都市部での二次登録は行わない予定
・1月16日~1月31日 登録確認期間
必要に応じて採用試験。各領域で都市部への希望者の集中の有無の確認や調整を行う
・2月1日~2月14日 採用期間
プログラム統括責任者が、当該領域学会および機構と協議し採否を決定
・2月15日 専攻医希望者への採否の通知

新専門医制度、初年度専攻医の一次登録がスタート』(日経メディカル)

 

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Contents

想い1「なぜ専門医制度を刷新しようとしたのか分からない」

そもそもなぜ専門医制度を刷新しようとしたのかがよく分かっていないです。

 

この問いに対する答えが、日本内科学会のホームページに記載されています。

現在の内科の認定医制度は、認定内科医の研修期間に初期臨床研修が組み込まれた結果、内科全般の研修期間が減少し、内科系研修がSubspecialty研修に偏り、GeneralityとSubspecialtyが調和した本来の内科医像から外れているところがあると思われます。また、受験資格のハードルの高い総合内科専門医試験の受験者減少や内科系専門医の領域的、地域的偏在などが問題化されています。新制度では、GeneralityとSubspecialtyが調和した本来の内科医を育成するため内科全般(Generality)の研修の強化が、日本専門医機構を中心に進められる専門医制度の標準化によって、国民からの信頼に一層応えられる内科専門医育成のための制度改革です。

新専門医制度FAQ』(日本内科学会)

 

要するに「Generalistを育成したい」というのが主な目的のようです。

Generalなmindを持っているのが本来の内科医像」と謳われているのですが、「よくわからない考え方やな」というのが正直なところ。僕らは医学生のころから臓器別に内科学を学んでいますし、研修医の中でGeneralistになりたい人はまだまだ稀な印象です。また、初期研修で既に内科各科をローテートしているのに、再度後期研修でローテートすることに意義があるのか疑問です

例えば、循環器内科志望の医師がカテーテルを握るのが遅れてしまう、消化器内科志望の医師が内視鏡を握るのが遅れてしまう、、、ということも懸念されます。これらの手技は若いうちにたくさんの症例数を集中的に積んだほうが早く上達するからです。

ドラマでは救急医がフィーチャーされ、NHKではドクターGが放送され、一般にはGeneralistがもてはやされているように思われがちですが、まだまだ臓器別の専門家になりたいと思う研修医のほうが多いです。

ただ、新専門医制度に近い鍛えられ方をした、自治医科大学出身や離島で研修された先生方の臨床能力が極めて高いことが多いことを思うと、新専門医制度の理念も理解できないことはないです。

研修医の想いと専門医機構の意図に乖離がまだまだあるのでは、と思います。

 

想い2「働き方に制限がかかるのではないか」

新専門医制度、とりわけ新内科専門医制度においては、後期研修3年のうち1年は違う病院(連携施設)で研修を行うのが原則となっているようです。

わずか3年のうちに2つの病院で働くのは大きなストレスとなります。電子カルテの使い方、病棟でのルール、救急対応のルーチンワークなどなど。どれ1つとっても病院にとって十人十色で、何回も病院ごとのルールを覚えるのはストレスです。

後期研修は結婚・出産といった人生の大きなライフイベントが重なる時期であり、本来は柔軟な働き方が認められるべき時期です

これまでの制度だと、後期研修医がどの病院でどのくらいの期間働いて、専門医取得に必要な要件を集めるかは自分の裁量で自由に決めることができました。これが、少なくとも3年の間はプログラムに縛られてしまうこととなってしまいます。

ただ、大学院進学OKなプログラムもあり、当初と比べたら幾分緩やかになった印象も受けます。

 

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想い3「自由に診療科を選ぶことができなくなってしまうのではないか」

これまで日本においては自分が専門にする科は自分で自由に選ぶことができました。ただ、新専門医制度においては各プログラムにおいて定員が定められることとなり、事実上各専門医数に上限が設けられることとなりました。もちろん、地方の病院のプログラムを中心にかなりの数のプログラムにおいて定員割れするので、働く場所を選ばなければ自分の好きな診療科を選ぶことはできるのですが、都市圏で働きたい医師は選択できる診療科の幅が狭まってしまう可能性があります

もともと欧米では診療科ごとに上限が定められているのが当たり前らしいので、日本でも同様のシステムとなっていくのかもしれません。うまくいけば、産婦人科や麻酔科といった人員が不足している科にとっては福音となるかもしれません。一方、自分にとって不本意な診療科を選ばざるを得ない医師が出てしまうかもしれません。

 

 

まとめ「先輩の動向を注視したいと思います」

全然まとめになっていないまとめですいません笑

上記のような意見が研修医からよく聞かれるのですが、一番大変なのは今年2年目研修医の先生たちです。僕ら1年目研修医は、先輩たちの動向をみて、自分はどのように選択科や病院を選ぶべきか参考にしようと思います。

専門医制度に限らず、制度変更は概ね不評となってしまうことが多いのですが、みんな制度の中でしか働けないので、その枠組の中で自分のしたいことをやっていくしかないです。

2年目の先生方を見ていると、もともとは内科系の科目を志望されていた先生が、他のマイナー科志望に転向したりと、いろいろと思うところは多いようです。ただ、たかが制度変更で一生の仕事を変えちゃうのはちょっと勿体ないのではないかと僕は思います。

今回の制度変更で万一内科医が減ってしまったら、、、新内科専門医の功罪は大きいのではないか、と僕は考えます。多分そんなに変わらないとは思いますが。。。

 

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    • 10年目くらいの循環器内科医 より:

      現状、内科系に進むことは極めてリスクのある選択です。初期研修後に3年間も専門に集中した研修ができずに、中途半端な後期研修終わりの6年目になって、そこから専門医をとって・・・、意味が分かりません。事実、来年度から全国的に「明らかに」内科系志望が減っている模様です。人員の不足した診療科に進むのは現状の日本の医療制度では極めて割に合いません。人員不足による過大な労働、しかし給料は一緒、時間外労働費を付けようとしても、最近の労基の影響のせいで、実際の労働時間より低く記載が求められます。見切りをつけた中堅どころが、大学・公的医療機関を離れて民間病院に流れつつあります。ぜひ、そんな地獄の内科系に進んで、日本の医療に貢献頂く事を期待しています。

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プロフィール

名前:のび太
とある国公立大学を卒業し、とある病院で働いている臨床研修医。2019年〜小児科後期研修医、2017-2019年初期研修医。研修医になって見て感じたことを記録に残したくてブログをはじめました。のび犬じゃないよ笑

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