研修医として救急外来で働いていると心肺停止の患者さんが救急搬送されてくることも珍しくありません。そんな中、違和感のあることが度々あります。
人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる医師への道
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研修医として救急外来で働いていると心肺停止の患者さんが救急搬送されてくることも珍しくありません。そんな中、違和感のあることが度々あります。
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救急医療の現場では、
「急変時DNRの患者さんが救急隊に胸骨圧迫されながら搬送されてくる」
という場面に出くわすことは珍しくないでしょう。
DNRあるいはDNARはDo Not Attempt to Resucitateの略です。
日本語にすると「蘇生処置を試みるな」の意味。
例えば、がんの終末期の方や非代償性心不全の末期の方に関して、胸骨圧迫や挿管治療など、大きな侵襲を伴う医療を行わない、という意思表示のことです。
「DNARの患者さんに胸骨圧迫が行われる」という現状は研修医になって初めて知りました。
日本においては医師・歯科医師が死亡診断しない限り、人は死にません。
たとえ、誰がどう見ても心肺停止している患者さんであっても、死に瀕して回復の見込みのない患者さんであっても、救急隊の使命は人命救助である以上、蘇生処置をすることなく病院に搬送するのは難しいのです。
この問題は、現在社会で認知され始めていて、日本臨床救急医学学会が提言を発表しています。
「人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言」の公表(2018年7月15日閲覧)
http://jsem.me/news/1670
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先に示した提言では、救急隊がとるべき基本的な対応基準が示されています。
<基本的な対応手順>①救急現場に到着した救急隊は、心肺蘇生等を希望しない旨が医師の指示書等の書面で提示されたとしても、まずは心肺蘇生等を開始する。②心肺蘇生等を継続しつつ、救急隊はかかりつけ医に直接連絡して心肺停止の状況等について報告し、医師の指示書等の記載内容と心肺蘇生等の中止の是非について確認する。かかりつけ医に連絡がとれない場合には、オンラインメディカルコントロールを担う医師を代役として指示を求める。この間においても心肺蘇生等の継続を優先する。③救急隊は、心肺蘇生等の中止の具体的指示をかかりつけ医等から直接確認できれば、その指示に基づいて心肺蘇生等を中止する。④これら一連の手順は、本提言で例示した標準的活動プロトコールに基づいて都道府県メディカルコントロール協議会等が地域の実情にあわせて修正した地域の活動プロトコールに則して行う。『人生の最終段階にある傷病者の意思に沿った救急現場での心肺蘇生等のあり方に関する提言』より
結局は、患者さん本人がどれだけ心肺蘇生処置を望んでいなくても、救急隊が現場に到着したら心肺蘇生を開始されてしまうことになってしまいます。
がんの末期の患者さんを在宅で看病していた家族が、いざ最期の時となった際に、びっくりして119番通報してしまい、現着した救急隊が胸骨圧迫を開始、病院に搬送されて、当直してる僕の指示で蘇生努力を中止し、死亡診断する、、、そんな場面が何度かありました。
胸骨圧迫をせずに病院に患者さんを搬送するのは、法律の壁的に難しいかなぁ、と思います。なかなか難しい問題です。
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じゃあ、救急隊員に死亡診断をする権限を付与すれば?という話も稀に聞きますが、蘇生中止に高度な判断を求められる場合があります。
例えば推定心停止時刻から1時間経っていたら、どう考えても戻らないので蘇生努力中止の判断は容易です。
ただ、例えば「もちを喉につまらせて、家族が119番して数分で救急隊が到着しもちが除去された場合」には脳が虚血に陥った時間がきわめて短時間だと考えられるため、蘇生努力する価値があるかもしれません。その細かい包括的な判断まで救急隊に求めるのは酷だと思います。
そもそも救急隊はAED以外の除細動器を使うことすら許されていないわけで、まだまだ権限は小さいです。(心電図を読んで心室細動・脈なし心室頻拍と診断することが許されていない)
日本の医療・法律は「医師の判断」に莫大な裁量権を与えています。
救急隊が単独で「蘇生処置をしない」という判断をするのはまだまだ先のことと思われます。
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ターミナルの患者さんを看護しているご家族は、患者さん本人が最期のときを迎えたら、慌てず騒がず普段お世話になっている往診医の先生を呼ぶことが大切です。(亡くなってから往診医を呼んでもよいでしょう。)
普段から、最期のときの対応する方法について、往診医と一緒に話し合っておくことが大切かと思います。なかなか難しいでしょうが。
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執筆者:のび太
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