救急外来で当番をしていると、「胸痛」や「心窩部痛」を主訴に来院される患者さんに悩まされます。同様に「胸部不快感」を主訴の患者さんにも難渋することが多いです。
「胸痛」を主訴に来院された患者さんの場合には、
・急性冠症候群(急性心筋梗塞・不安定狭心症)
・緊張性気胸
・大動脈解離
・肺動脈塞栓症
の4疾患(いわゆるfour killer pain)を除外することから診療は始まります。
研修医の中でも人気の『問題解決型 救急初期診療』を紐解いてみます。
鉄則:どんな胸痛(胸部不快感を含む)を主訴とする非外傷性の患者でも、除外診断されるまでは急性冠症候群として扱う。
とあります。そして、急性冠症候群を否定した場合、心血管系疾患は16%、非心血管系疾患は84%となるそうです。(この統計はプライマリケア外来での統計で、救急外来ではこれよりも頻度が高くなるはず、とのこと)
ちなみに、上記の『問題解決型救急初期診療 第2版』では、胸痛を主訴とする患者さんに関しては、上記4疾患に加えて、心タンポナーデ、食道破裂、急性胆嚢炎、急性膵炎の4疾患を加えた合計8疾患を除外すべきである、と書かれています。
胸痛を主訴に来院された場合でも、胸腔内の疾患とは限らない、というのが厄介なところです。鑑別疾患は、心臓・肺の疾患のみならず上部消化器の疾患にまで及びます。
その一方、「心窩部痛」を主訴に来院された患者さんの場合には、上記の『問題解決型救急初期診療 第2版』の「上腹部痛」の疾患を見てみると、
・急性膵炎
・胃・十二指腸潰瘍(とその穿孔)
・急性虫垂炎(の初期)
・急性膵炎
・胆嚢炎、胆石発作、胆管炎
・イレウス
などなど鑑別は多彩になりますが、「心窩部痛」と言われると消化管関係の疾患がメインとなります。ただ、もちろん「胸痛」で挙げたfour killer painもありえます。